大判例

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東京高等裁判所 昭和59年(行ケ)100号 判決

一 請求の原因一及び二の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、審決にこれを取消すべき違法の事由があるかどうかについて判断する。

1 いずれも成立に争いのない甲第一二号証ないし第一七号証、第二〇号証ないし第二三号証によれば、吉向焼は、江戸時代後期の文化年間に伊予国大洲出身の戸田治兵衛が大阪十三村で焼いたのに始まり、江戸、摂津、周防、信濃の各地において焼かれていた陶器であることが認められ、審決が、「吉向焼」なる標章は、陶磁器の取引者間においては焼物の一種を指称するものとして理解されている、としたことに誤りはない。

右認定に反する請求の原因1の主張は理由がない。

2 原告は、「吉向」の銘を印して陶磁器の製造販売しているのは原告のみであり、「吉向」の銘を印した原告製造にかかる陶磁器製品は既に多量に販売されているから、本願商標を使用した陶磁器が原告の製作にかかる作品であることは、陶磁器の取扱業者、需要者に認識されるに至つており、本願商標は出所表示機能を備えている旨主張する。

しかし、「吉向」の銘を印した陶磁器製品が原告の製造にかかるものとして陶磁器の取扱業者、需要者に認識されているかどうかはともかくとして、本願商標は「吉向窯」の標章からなる商標であるから、「吉向」の標章についていえることが、「吉向窯」の標章について妥当することにはならず、この点において原告の主張はすでに理由がなく、成立に争いのない甲第一一号証も「吉向窯」の標章からなる本願商標が使用による特別顕著性を備えるに至つたことを認めしむるに足るものではなく、成立に争いのない甲第三〇号証ないし第三二号証も、原告の依頼により予め用意された文面を用いその取引先が好意性に作成したものであることなど弁論の全趣旨によれば、一般需要者にまで本願商標が原告の製作する商品を表示するものとして認識されていることを証するものとはなし難く、他にこれを認めるに足る証拠はない。原告の主張は理由がない。

三 以上の通り、原告の主張はいずれも理由がなく、本件審決にはこれを取消すべき違法の点はないから、その取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。

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